2022年3月5日に【SDGs英語ニュースについて議論する】ワークショップ第4回「コロナ禍で明らかになったアメリカと欧州における社会保障制度の格差:Coronavirus Crisis Shows Imbalance Between US, European Safety Nets」を開催しました。この中で統計や社会福祉の概念に関して、注意が必要な個所がありましたので、まとめておきます。
社会保障費の国際比較と統計
ワークショップは以下のVOAの記事を利用しました。
Coronavirus Crisis Shows Imbalance Between US, European Safety Nets
文章は以下の節により締めくくられています。この節の中では「社会保障給付金 (social security payments)」とGDPの関係が論じられています。
The total value of goods and services provided by a country is called its gross domestic product, or GDP. In the United States, 6 percent of the GDP in 2018 was social security payments, the OECD reports. In France, the amount was 16 percent. And, social security payments accounted for 14 percent of Germany’s 2018 GDP.
しかし、通常OECDの統計を使った「社会保障費とGDPの関係」の国際比較が論じられる時は、一般的には社会保障給付に必要な事務費用と実際の給付金額の合計額(public social spending)であることに注意が必要です。上記のVOAの記事では社会保障給付金のみの国際比較になっています。以下、最新のOECDの統計です。
Social spending makes up 20% of OECD GDP
自分でデータを集める時は、英語の原文と日本語の意味がマッチしているように注意を払う必要があります。
政治思想と社会保障制度
今日、話題になったのが、社会保障制度と政治思想及びガバナンスの関係です。いわゆる先進国の中で社会保障費の給付に差が出るのは、その国の「経済力」ではなく、「政治思想及びガバナンス」が主な理由です。なかでも、なぜ、世界一裕福な国である米国の貧困率が高く、社会保障制度が貧弱なのか、疑問に思った人は多いのではないでしょうか。それを知るためには米国の歴史とその他の先進国の社会保障に関する発展史を比較して検討する必要があります。
なぜ米国では「社会保障制度」が脆弱なのか?それを知るための、有名な一節があります。ノーベル文学賞受賞者のJohn Steinbeckの言葉とされていますが、事実ではないとの意見もあります。
"Socialism never took root in America because the poor see themselves not as an exploited proletariat but as temporarily embarrassed millionaires."
しかし、この一節は、米国の文化を知るために重要なキーワードが複数含まれています。欧州で福祉国家を建設する機運を高めた原因の一つである、ロシア革命と社会主義の思想、移民国家として発展してきた米国の歴史、アメリカン・ドリームの神話などと大いに関係があります。
日本の社会保障制度の発展もわが国独自の歴史とそれを支える思想の影響を大きく受けてきました。米国の社会保障制度についても、欧州との比較で重要な歴史的差異があります。これらを論じるためには、もっと時間が必要なので、これは後に有料記事として発表したいと思います。
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