大学生、社会人に必要な論文・レポートの作成・執筆のスキルを構築する
社会課題から研究テーマを決める
本格的な論文を初めて執筆する人にとって、「研究課題をどうデザインするか」は、たいへんハードルの高いタスクです。先日のnoteでお知らせしたように、この部分を自分自身と想定される読者に納得のいくように設計することができれば、論文・レポートの半分以上は終わったといえます。
“論文(あるいは仕事のレポート)というのは「研究の成果」を文書として発表することです。研究そのものが既に終了しており、書くべき内容が定まっていれば、論文に仕上げることは、実はそれほど難しくありません。このワークショップを「論文の教室」と呼んでいますが、最も困難なことは「どのように『研究』を設計するか」です。”
Global Agenda
「論文の書き方」から研究を考える
これまで、私が出会った人々から感じたことは、「研究をはじめる」動機は、大袈裟に言えば、人類、控えめに表現するなら、自分や周囲の人々が直面している「課題」を解決したい、という場合が多いようです。それゆえ、「社会課題から研究テーマを考える」というのは、その解決に向けて、研究を続ける強い動機付けになります。「なぜ、そうなのか」「どうすれば、困っている人々を助けることができるのか」その理由と解決策を考え、それらを実行に移してきたことで、ホモ・サピエンスは進歩してきました。ですので、この考え方は、私たち人間のDNAに組み込まれている、と言っても過言ではありません。
社会課題を見つめる視点
一方、ある社会課題について、私たちが議論する時、議論の参加者の争点が同じではないことが、しばしばあります。同じ課題について議論しているつもりなのに、実は全く別々のことを論じている、ということは頻繁にあります。これは、そもそも、ある事象として現れる「社会課題」が、実際には、テーマが一つではなく、複数の課題を含んでいることから起こります。論者はそれぞれ、自分が最重要だと思うテーマについて、その「事象」を見ていますが、別の論者は全く違う問題意識から、その「事象」を捉えていることが、少なくありません。近年、SNS上で、ある「事象」に現れた「社会課題」について「炎上」するのは、多くの場合、議論の参加者たちの争点が一致してないからです。
社会課題について研究をする場合は、ある「事象」から、複数の「社会課題」を抽出し、研究のテーマと対象を決め、研究者自身にとって、最適な研究の手法を選ぶ必要があります。一見、自明なことのようですが、いざ取り掛かると、簡単ではないのが「研究のデザイン」です。
そこで、今回は、つい最近SNSで炎上した具体的な「社会課題」を提供した事象を対象に、どう「研究テーマ」を抽出し、研究を進めるのか、という演習のためのワークショップを開催したいと思っています。テーマは次のセクションで、ご確認ください。
だれでもトイレ(オール・ジェンダー・トイレ)を巡る議論
日本では身障者などの利用を想定した「だれでもトイレ」が、近年、欧米諸国では「性別に関係なく使える(オールジェンダー)トイレ」として、公衆トイレの標準モデルになるという傾向が進んでいます。この形式のトイレが日本で登場した当初は、「ユニバーサル・デザイン」の考え方のもと、体に障害のある人や高齢者に向けた「公衆トイレ」という認識でした。しかし、近年、LGBTQの人々など、自分の性自認が男女の区別に馴染まない人々の存在が、社会で認められるようになったことで、トイレそのものの性別もなくそうという動きが海外では一般的になりつつあります。その流れを受けて、新しい公衆トイレが東京都渋谷区に登場しました。
渋谷区が提供する新しい公共トイレ事業:THE TOKYO TOILET
しかし、このトイレの一つについて、渋谷区議員が以下の発言をしたことにより、公共の「女性トイレ」を無くす方向ではないかと、多くの人々がこの事業に疑問を呈しました。
後に、渋谷区は「女性トイレ」を廃止する予定はない、とこの議員の発言を否定しましたが、この案件に対して、欧米のトレンドと合わせて、多くの人が「公衆トイレ」はどうあるべきか、という意見を表明しました。
「なんでだろう?」 渋谷区の新トイレに“女性専用”がない理由 区民からは賛否の声 https://news.livedoor.com/article/detail/23836072/
日本でこの案件が炎上した理由は大きく二つあると思います。一つは「性犯罪防止」であり、もうひとつは「LGBTQへの配慮」です。この二つが一緒に論じられることにより、多くの混乱が生じました。
しかし、この渋谷区の「公衆トイレ」には、ほかにも複数の課題があると思います。例えば、以下のようなものです。
公衆トイレでの犯罪の防止
公衆トイレでのLGBTQへの配慮
身障者、高齢者、子どもの利用を意識したユニバーサル・デザイン
公共デザインの課題
建築家、都市デザイナーの多様性
都市デザイン決定プロセスの問題
都市計画における公共スペースの定義
公共スペース維持の費用負担の問題(財政)
公共スペースのデザイン・ガイドライン
公衆トイレの歴史
上記以外にもあると思いますが、これらの課題から、どうやって「研究をデザインするのか」を話し合うことによって、研究の進め方を理解できるのではないかと思います。以下、この認識に基づいたワークショップを準備しました。
補足資料
渋谷区で女性トイレがなくなった?バリアフリーにオールジェンダー? | NHK | News Up
チケット
[ワークショップ]社会課題から研究をデザインする@オンライン 3/26(日)20時https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/01h8b817eay21.html
【銀行振込での申し込み】
振込用紙は以下のサイトからダウンロードお願いいたします。
詳細は以下のとおりです。会場での開催は3/21です。
[ワークショップ]社会課題から研究をデザインする@大阪梅田 3/21(祝・火) 16:30~
詳細
日時: 2023年3月26日(日)20:00-21:30
場所: オンライン
参加対象者:大学生及び社会人 (定員:8名)
費用:5,500~6.000円 (教材、消費税込み)
サロン会員割引価格 5,500円
通常価格 6,000円
【キャンセル・欠席の扱い】
欠席された場合は次回あるいは別セミナーに振り替えとします。
希望者には後日それを基に書いていただいた論文の添削と個人指導をいたします。集団指導コースも今後のニーズを見ながら、随時開催予定です。オンラインの開催も計画しています。遠方の方にはSkypeやGoogle Meetを利用した講義と添削サービスを提供いたします。
【講師】
Dr. Kuniko Shibata, Global Agenda 代表
【講師の略歴】
The London School of Economics and Political Science (LSE) 博士課程卒業, PhD in Regional Planning. 日本の大学を卒業後、営業職から米国への語学留学、大手外資系企業の役員秘書職を経て、英国の大学院で公共政策(地域都市政策)の博士号を首席(Distinction)で取得。米国のロータリー財団と南オーストラリア州政府からフェローシップを得て、カナダのThe University of British Columbia、豪州のThe University of Adelaideの都市政策研究科に客員研究員として留学。主に国際学術雑誌及び欧米の出版社から研究成果を発表。論文は国際学会での受賞等、海外で高い評価を得ている。過去25年間、国内外で政府、シンクタンク、大学、企業等の依頼を受け、公共セクターのリサーチャー並びにコンサルタントとして政策研究及び市場調査に従事する。都市計画、地域振興、観光/文化、環境/エネルギー、医療/介護福祉、コンプライアンスなど幅広い分野をカバー、白書や政府委員会レポート等の執筆、外国政府・企業関係者との交渉を引き受けてきた。現在は、関西を拠点に政策調査、日本企業の海外展開支援及び調査コンサルティング事業、海外企業の日本市場におけるマーケティング及び販路開拓支援、グローバル人材教育事業を手掛けている。
オンライン・サロン& noteゴールド会員について
現在、オンライン・サロン「朝英語の会@京阪神~The Japan Times 紙記事について議論する~」とnoteサークル「英語で学ぶ大人の社会科」の会員を募集しています。サロン会員とゴールド会員は全てのワークショップに割引価格で参加できます。
【オンラインサロン】
【note】サークル
以下は朝英語の会@京阪神の過去記事もアップしているブログです。これまでに行ったワークショップの詳細や参加者の様子をアップしています。
【Global Agenda ブログ】
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「論文・レポートの書き方」参考記事
また「論文の書き方」に関しては以下の記事も参考になると思います。
アカデミック・ライティング: なぜ訓練が重要なのか
【論文の教室】盗用・剽窃に関する注意
「論文の自己評価について」【論文の教室】大学生・社会人のためのレポートの書き方
大学の役割:研究機関 vs 教育機関
さらににライティングのスキルをアップされたい方は以下のサイトも参考にしてください。
[WritingCafe] 英語論文アカデミック・ライティング・グループ
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