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執筆者の写真Dr. K. Shibata

【論文の教室】盗用・剽窃に関する注意



このたび、「論文の教室」「アカデミック・ライティング-英語論文の書き方」という二つの講座を開くことにしました。そこで、コースでも取り上げますが、資料の引用や参考文献、剽窃について、少し言及したいと思います。


今年は新型コロナの感染防止のため、新学期が始まってから、まだオンライン授業しけ受けていない大学生が大半のようです。しかも、オンライン授業だから「学生の様子が十分に把握できない」といった理由で、例年以上に多くの課題レポートが出されていると聞きます。しかし、高校を出たばかりの大学生が卒業論文などの研究論文、そして、後には学術論文の入口となる「研究レポート」や「課題論文」を特に指導を受けずに執筆できるかというのは、はなはだ疑問です。なぜなら、日本の大学では海外の大学なら入学後に受講するのが通常の「論文の書き方」講座を開講している大学がまだまだ少数のようだからです。

少なくとも、自分が日本で大学生の頃にはこの「論文の書き方」を教わることはありませんでした。もちろん、中学・高校でも皆無でした。したがって、社会人でも「意味不明な」企画書、報告書やレターを書いている人を見ても驚きません。一方、欧米の教育制度では小学校からこの「レポートの書き方」を教わるらしく、また大学でも新入生の時に本格的な「論文の書き方」を教わります。なぜなら、少なくとも英語圏では、大学に入学すると普通は科目ごとに年間2本以上の課題レポートの提出があり、英語では3,000語以上、日本語では約6,000字以上がほぼ標準的な課題だからです。

私は英国で修士号、博士号を取得し、カナダの大学院でも複数の科目を受講しましたが、最初に苦労したのはこの科目の履修のために提出させられる膨大な量の「課題レポート」でした。これは、外国人にとっては、かなりの苦行でしたが、英語が母国語の人々にとっても大変なプレッシャーだったようです。大学院入学前と豪州で研究を始める前に「論文の書き方」講座を受講しましたが、「論文の執筆」がかなり楽になったのは、博士号を取得する前くらいだったように思います。なぜ、論文や課題レポートの執筆が大変かというと、多くの情報を精査して、それを自分の言葉でまとめ、論理的に齟齬が無い文章に仕上げるにはかなりの訓練がいるからです。その基礎的スキルを議論したものが以下の書籍のようです(推薦されましたが、まだ読んでいません)。


具体と抽象―世界が変わって見える知性のしくみ


この難しさのために、他人の書いた文章をそのまま「切り貼り」してしまう「盗用」「剽窃」をする人がいるわけです。これは意識して剽窃をしているケースですが、もちろん後のリンク先の例にあるように、ルールを十分に熟知しなかった結果、剽窃行為をしてしまう学生や研究者もいます。しかし、「論文・レポートの書き方」を義務教育のスタート時から習う欧米の学生なら、「剽窃」が不正であることを早くから認識していますが、日本の大学生はそうではありません。つい最近も「文献からの切り貼り=剽窃」が不正であることを「知らなかった」大学生に出会ったばかりです。その学生に見せたのが以下の文書です。

レポート・論文作成時の盗用・剽窃に関する注意 神戸大学経済学部・大学院経済学研究科 http://www.econ.kobe-u.ac.jp/student/pdf/report-hyosetsu.pdf


レポートや論文の中で、「 調 べ て 、書 き 写 す 」部 分 と 、「自分なりに検討したり、考察を加えたりする」部分との、明確な区別が必要 となります。「調べて、書き写す」部分は、それを以前に報告・記述した他人の貢献 なので、 その人物の名前と(参考にした)著作やウェブサイトなど出典を明示して、「 引 用 」す る こ と が 基 本 と な り ま す 。

この他人の貢献の利用方法には、はっきりとしたルールがあります。難しくはありません。しかし、 このルールを守らずに、不適切な方法で他人の貢献を利用すると「盗用・剽窃行為」とみなされる ことになります。 基本的には、試験におけるカンニングと同じく、不正行為とみなされますし、同様の処分の対象となります 。またそのような文章を公刊した場合は、知的所有権(著作権)を侵すことになり、犯罪として処罰されます。

実は日本語と英語の論文では引用のあり方や参考文献の扱いも違う部分があり、私自身も戸惑うことがあります。今回、日本語の「論文の教室」と「アカデミック・ライティングー英語論文の書き方」と二つの講座を開講しますので、講義の時により具体的に違いを説明したいと思っています。


上記はの資料は日本語論文や研究レポートにおける引用の方法ですが、以下は英語における引用や言い換えのルールです。


QUOTING AND PARAPHRASING


また、研究論文でも不正や過失で論文を盗用しているケースもありますので、以下はそれに関する注意事項です。


学術界の剽窃行為とその予防策


研究論文での盗用を未然に防ぐには?


論文の盗用・剽窃を避けるコツ-前編


論文の盗用・剽窃を避けるコツ-後編


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