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執筆者の写真Dr. K. Shibata

ESG情報の開示とステークホルダー資本主義

更新日:2020年12月30日



先日、バイデン新政権の科学政策に関しての第1回の議論を終了しました。


「バイデン次期米国大統領の科学政策」【英語で学ぶ大人の社会科】K's Bar 第17回@オンライン :12/27(日)& 1/3(日)20時~


バイデン新政権がとりわけ力を入れているのが、トランプ政権で後退を余儀なくされた環境政策をはじめとする科学政策の立て直しです。気候変動の激化・パンデミックの勃発など世界的にも科学政策の重要性は増すばかりです。そして科学政策の動向は個人の生活・企業活動にも大きな影響を及ぼします。そのような状況で重要性を増しているのがESGの理念をどのように企業活動に反映させるか、そしてその情報をどのように一般に公開していくのかという議論です。


以前から感じていたことですが、日本の企業人は世界のビジネス界が株主資本主義からステークホルダー資本主義に既に移行しているという実感が薄いようです。ESG・カーボンニュートラルは、もはや単なる努力義務でも「絵に描いた餅」でもありません。「実現が難しい」から放置してもよいものではなく、その実現に向けての企業間・研究者間の競争がイノベーションを生み出し、社会を猛烈なスピードで変革してきたのです。それでも、現行の市場経済「株主資本主義」の枠組みだけで、環境リスクを軽減することは不可能です。気候変動・パンデミックがもたらす環境リスクは翻って個人や企業の存在を危うくすることを今回の新型コロナウィルスは明らかにしたと思います。


IFRS財団が新たに発表した「サステナビリティ報告に関する協議ペーパー」は企業のESG情報の開示の指針を策定するためのコンサルテーション・ペーパーです。我々はこれをESGを企業活動に組み込むことを促すための新たなフレームワークと捉えるべきです。


これらの動きに関しては、以下の記事が詳細な解説をしています。


IFRS財団は、サステナビリティ報告基準の設定主体となるべきか – 意見募集始まる



【水口教授のESG通信】ESG情報開示のゆくえ - IFRS財団の提言が意味すること


日本経済新聞もこの動きに関しては詳しく報道しています。


「会計外交」舞台はESG 日本、代表送り込めるか


しかし、経団連が出した意見書はやや後ろ向きで、少し失望させられました。特に最後の質問に関する意見が気になったので、ここで要約を抜粋しています。


IFRS財団 市中協議文書「サステナビリティ報告」に対する意見

2020年12月18日

経団連 金融・資本市場委員会

ESG情報開示国際戦略タスクフォース



開示されたサステナビリティ情報を監査の対象とするかは、各国規制当局の判断に委ねられるべきものであり、基準設定主体が定めるものではない。サステナビリティ情報についての監査・保証の必要性や手続きも、国際的にコンセンサスが得られているとは言えないことから、導入に向けた議論を拙速に行うべきではない。【質問10】

日本は京都議定書でリーダーシップを取るなど、「環境大国」としてのイメージが海外では好意的に受け止められてきました。しかし、近年、石炭火力発電を国内で継続するだけでなく、海外にも輸出を図るなど、気候変動対策の遅れが指摘されています。日本の政府と企業はこの分野でもかつてのように存在感を発揮し、環境問題解決のためのR&Dで世界をあっと言わせてほしいと願っています。

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